「AI時代に社員を置き去りにしない社長の話し方とは」(社長・経営者の話し方教室東京)


「AIを活用して、生産性を高めてほしい」。社長がそう呼びかけても、社員全員が同じように動けるとは限りません。新しい技術への期待がある一方、「自分の仕事はなくなるのか」「何から学べばよいのか」と不安を感じる社員もいます。

PwCが2026年9月に公開した国際調査では、AI活用や技能の市場価値による職場の分化が報告されました。全体の56%を占める「中核層」で、経営陣を信頼している人は33%にとどまります。ただし、AI導入が不信の原因だと断定する調査ではありません。

今回は、こうした状況を踏まえ、本学・話し方教室の視点から、社員を置き去りにしない社長の説明力・傾聴力・対話力を考えてみます。

1.AI導入の目的を丁寧にわかりやすく説明する

会社の未来を明確に説明する

社員にAI活用を求めるときは、「何を導入するか」に加え、「なぜ必要か」「お客様や社員にどう役立つか」を伝える必要があります。「他社も使っているから」では、社員が取り組む意味を理解しにくくなります。

例えば、「まず、報告書の下書きにAIを活用します。事務作業の時間を減らし、お客様への提案やサービス改善に時間を使うためです。まずは社内文書から試します」と説明することです。

説明は、結論、理由、具体例の順に話すことで、経営方針と日常業務がつながります。社長の話し方には、会社の未来を社員自身の仕事に置き換える説明力が必要です。

社員の役割・評価・学習支援を伝える

社員が気にしているのは、AIの便利さだけではありません。「仕事はどう変わるのか」「使えないと評価が下がるのか」という疑問にも向き合う必要があります。

「AIが作った内容を確認し、お客様に合う形に整える判断力を重視します」「業務時間内に学べる機会を設けます」と、期待する役割と支援方針をセットで伝えてください。

未決定のことは、「現在検討中です。決まり次第、理由も含めて説明します」と明示します。実現できるかわからない約束をせず、決定事項と検討事項を分ける誠実な説明が、経営への信頼を支えます。

2.傾聴で社員の不安や現場の声を受け止める

方針説明の前に社員と対話する

社員がAI活用に踏み出せない背景は、一人ひとり異なります。操作への苦手意識、情報管理への心配、業務の忙しさなど、現場の事情を把握しなければ、必要な支援は見えてきません。

社員との懇談会や職場訪問では、「どの業務に時間がかかっていますか」「AIを使ううえで、何が心配ですか」と具体的に尋ねてください。

回答を聞いたら、「確認方法がわからず、使うことをためらっているのですね」と要約します。社長が自分の言葉で理解を確かめる姿勢は、社員の声を経営に生かす出発点になります。

反対意見や質問を歓迎する姿勢が大事

「時代についていけない人は困る」「まずやってから考えて」。社長のこうした言葉は、社員が懸念を伝えるハードルを上げてしまいます。

そうではなく、「疑問や心配も、進め方を改善するために必要です」「遠慮なく懸念も教えてください」と、率直な意見を歓迎してください。

心理的安全性を高めるには、質問した社員にどう反応するかが重要です。その場で否定せず、懸念の根拠を聞き、回答できない内容は確認して返します。社長の聞き方が、組織全体の相談しやすさに影響します。重要です。

3.対話による承認と継続的情報共有で全社員の成長を支える

AIの成果とともに現場の経験や協力を承認する

AIに詳しい社員だけを称賛すると、慣れていない社員が「自分は必要とされていない」と感じる可能性があります。会社を支える現場の経験、顧客理解、品質を守る工夫にも目を向けてください。

「現場の知識を加えたことで提案の質が高まった」「確認手順を共有してくれたので、安心して使えるようになった」と、貢献を具体的に伝えます。

社長が何を評価するかは、社員の行動の指針になります。操作の速さだけでなく、判断力、説明力、協力する姿勢を認める言葉が、互いの強みを生かす組織づくりにつながります。

方針は繰り返し伝え社員の声への対応も共有する

全社説明会で一度話しただけでは、経営方針が十分に伝わったとはいえません。朝礼、社内報、動画などを活用し、目的や進捗を継続して共有します。

その際、「社員から学習時間が足りないという声があったため、研修時間を確保しました」と、意見への対応も説明します。声を聞いたら、聞きっぱなしにせずに、その結果、何が変わったかを示すことが大切です。

部門ごとの疑問は管理職を通じて集め、共通する質問には社長自身が答えます。ちなみに本学・話し方教室では、社員に届く経営コミュニケーションとして、要約、質問、フィードバックの技術もご指導しています。

社長スピーチ研修所/酒井美智雄の一言

AI時代に社員を置き去りにしない社長には、導入の目的と社員の役割を明確に説明し、現場の不安を聞き、学習や協力を具体的に進める姿勢が求められます。そして、対話から見えた課題には、できうる限り、時間や予算、仕組みの整備で応えることが重要です。

社長の言葉は、社員が会社の未来に参加するための入口になります。「AIを使ってほしい」にプラスして、「何か心配なことはありませんか?」「会社にはどんな支援が可能ですか?」と尋ねることから始めてみてください。

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■ 社長・経営者の話し方教室提供/スピーチの名門・社長スピーチ研修所/社長スピーチ研修所・日本コミュニケーション学院 総責任者 酒井美智雄